●自閉症の特性を軸にする意味
自閉症の支援を進める上で大切な軸として「自閉症の特性を理解する」があります。自閉症の特性は、様々な行動や活動の自立に影響を与えます。
自閉症の特性で考えるか、考えなかいか、によって支援計画が大きく変わってきます。例えば自閉症の特性ではなく一般的な視点で「落ち着きがない」といっても支援計画のイメージを持つことができません。しかし、自閉症の特性としての視点で考え、「多動性=常に体を動かして自分の状態を維持する」「転導性=情報や刺激に次から次に引っ張られ移り変わる」とすると支援計画のイメージにつながります。
多動性であれば、一日の中で思いっきり体を動かす時間を設定したり、椅子などを工夫するなどの支援計画が考えられます。転導性であれば、刺激や情報を統制し(無視できるようにし)今やるべき活動を明確に指示するなどの支援計画が考えられます。
ただ難しいのは、一人の自閉症児・者は自閉症の影響だけではなく、発達年齢の影響、生育歴や環境など様々なことから影響をうけます。そこで重要なのは、それをごちゃ混ぜにして考えるのではなく、分けて考えることと、総合的に整理して考えることが必要になります。
●自閉症・発達障害特性シートを書きだそう!
では特性を軸とする支援はどこからスタートすればいいでしょうか?書籍『フレームワークを活用した自閉症支援』では、まず特性を書き出すことから始めることをお勧めしています。活用するフレームワークシートは『自閉症・発達障害特性シート』です。参考にしていただきたいのは、書籍『フレームワークを活用した自閉症支援』の114~117頁、書籍『生活デザインとしての個別支援計画ガイドブック』の138~145頁の『自閉症特性解説の手引き』を参考に書いてください。
書く時に重要なポイントは、一挙に完璧に書くのではなく、間違ってもいいので書きだし、書き続け最善な状態を更新続けることです。
これまでwebサイト『BOUZAN NOTE!では、自閉症の支援に関わる皆さんに、『フレームワークを活用した自閉症支援』を活用した支援スキルアッププログラムを公開していました。下のステップの演習は、個別支援計画の中で中核の計画としておすすめしている「自閉症・発達障害特性シート」の記入の演習です。(付箋紙を使った研修はこちら)
下の6つのステップは書籍『フレームワークを活用した自閉症支援』又は『生活デザインとしての個別支援計画ガイドブック』と手元において進めてください。
※よろしければご購入ください。もちろん、購入されてない方にも、スキルアップのヒントになると考えています。
【ステップ1:自閉症の人の行動を書き出す】
ステップ1は、自閉症の人の行動(言動)・様子を書き出してみます。書き出し方は簡単です。気になる行動などをメモします。活用するシートは『自立課題アセスメントシート』です。その人を観察して、定型発達の人と比べて、その内容、質、頻度、強さなどの違っていると考えられる行動(言動)・様子を考えて『自立課題アセスメントシート』にメモします。この時点では、まだ特性と結びつけなくても構いません。『自立課題アセスメントシート』の他の項目は浮かべば書いて、浮かばなければ空欄でかまいません。
以下は特性や行動の記録をする「行動・特性観察記録シート」です(ワークシートのページから)。このステップはこちらのシートもおすすめです。
【ステップ2:行動のメモを自閉症・発達障害特性シートに書き出す】
次に、ステップ1で、書き出した行動や様子を書籍『フレームワークを活用した自閉症支援』の126頁の「自閉症・発達障害特性シート」に書き出します。自閉症の人の行動・様子を関係ある特性の部分に書き出します。
繰り返しますが、特性シートは、一挙に完璧に書くのではなく、間違ってもいいので書きだし、書き続け最善な状態を更新続けるシートです。だから間違っていると考えずに思い切って書きだしてください。更新する場合はパソコンで打った方が良いかもしれません。
書籍『フレームワークを活用した自閉症支援』の114~117頁、書籍『生活デザインとしての個別支援計画ガイドブック』の138~145頁の『自閉症特性解説の手引き』を参考に書いてください。
【ステップ3:1つの行動・様子を他の場所にも書き出す】
ステップ1~2を通して、本人が見せる自閉症の特性を付箋紙に書きだし、それを「自閉症・発達障害特性シート」に貼りだしました。
そこで考えていただきたいのは、「1つの行動は1つの特性だけに関係しているのか?」です。1つの行動は、いくつかの特性に関している場合があります。なぜならば自閉症の特性1つ1つは他の特性と関連しているからです
例えば、物の置き場所を保持しようとする行動は、「変化の対応の特性」にも「空間の整理統合の特性」にも関係しています。
だから、次のステップは、1つの行動を貼ったところ以外の特性にも書き出していただきたいのです。
【ステップ4:自閉症特性解説の手引きを参考に、指導・支援を書いてみましょう】
ステップ1~3を通して、「自閉症・発達障害特性シート」に本人の特性に関する行動・様子を書き出し、さらに追記しました。次に実際に指導及び支援を書き出します。書き出すのは右側の“指導・支援の概要”の欄です。
行動を書き出すことも、指導・支援を書き出すことも、継続に更新を続けていきます。書籍『フレームワークを活用した自閉症支援』の114~117頁、書籍『生活デザインとしての個別支援計画ガイドブック』の138~145頁の『自閉症特性解説の手引き』の「指導・支援の指針、構造のアイデア」の部分を参考にして書いてみてください。
【ステップ5:特性ごとに文章を要約しまとめる】
ステップ1~4までのプロセスで書かれている物は、日常の具体的な場面での行動・様子と具体的な計画が書かれていると思います。しかし、本来特性シートでは、どんな場面でのイメージできる抽象的な、軸の文言に集約する必要があります。以下のスライドはイメージをまとめた物です。
よく講演で説明する特性の解説・指導・支援の方向性の例を紹介します。
特性の解説の記入で、
基礎研修児の記入:色々な場所に唾を吐く
と書いてあったとします。しかし、これはあまり特性シートとしては具体的すぎます。
アドバンスの記入:道具や材料などをどこに配置していいかわからない。
となります。
指導・支援の方向性も
基礎研修の記入:唾を吐いて良い場所に絵で指示を提示するとあると、特性シートとしては具体的で、1つの場面だけの支援計画になります。そこで、
アドバンスの記入:道具や材料などを配置する場所を絵で示す。になります。
アドバンスの記入になると、唾吐きの行動支援でも、道具を使った作業での自立支援の計画でも、様々な場面で応用的に活用ができる文言になります。
そこで、ステップ1~4で作成したものを要約しまとめてみますと以下になります。
このステップ5に関する関連記事はのリンクは以下です
特性シートはやや抽象的な軸の計画にするステップ(特性シートのアドバンス研修)
【ステップ6: 記入した特性シートをシナリオにして親御さんや周囲のチームに説明する】
http://bouzan-note.com/jiha/5159.html
演習1~5を通して、まだ完璧ではないにしても自閉症の特性と指導・支援を「自閉症・発達障害特性シート」をまとめました。
次のステップは、それをシナリオにして、親御さん、又はチームのメンバーに説明する機会を作ってください。注意が必要なのは、守秘義務の範囲内でおこなってください。その書いた特性シートの自閉症児・者の親御さんや、支援に関わる方に説明してください。今日の様子の説明や、何かの課題の1つの情報提供の場面で、特性シートを使ってください。続きはこちら
●関連のリンク
★青本『フレームワークを活用した自閉症支援』はこちらから(エンパワメント研究所)
★緑本『生活デザインとしての個別支援計画ガイドブック』はこちらから(エンパワメント研究所)
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