【共有の社会性段階】・・・道具や材料などを共有で使いながら活動できる社会的な段階です。
●相手の状況や気持ちに関心をしめすことができる
共有の段階では、同じ材料・道具を使っていることに関心をしめしながら、自分の活動の見通しをもって進めることが必要になります。
相手が今、どうしているか、何に関心を持っているのか、周囲に期待していることを想像しながら、状況にあわせて道具や材料を選んだり、時には相手に要求したり、そして相手に快く道具や材料を貸したりすることが必要になります。
自閉症の人は、相手の気持ちや相手の関心に注意を向けることが難しく、周囲の状況に応じた対応も難しくなります。自分のイメージに強く注目しすぎているために、周囲の人の気持ちや周囲の状況にあわない材料や物の使い方、それに必要なコミュニケーションが難しく、一方的に物や材料を要求したり、快く道具を貸したりすることが難しい場合があります※。
※このような道具や材料などの貸し借りは、シンプルなやり取りの範囲としています。自閉症の人の場合、そのシンプルなやり取りも形式でパターン的になります。複雑で交渉が必要な物の貸し借りの段階は、対人的相互交渉の段階になります。
●切り替えと見通しの必要性
共有の段階では、周囲の状況にあわせて、自分のもっているイメージから切り替えて、使うものを選んだりすることが必要になります。例えば、相手が自分が使いたかった緑のペンを相手が使っていた場合、(希望を伝えるか)違う色のペンで塗る方を先に進める必要があります。それは、その先、相手が使わなくなった時に使うという見通しを持てることからできることなので、見通しを持つことも重要なスキルです。
自閉症の人は、自分のイメージから違ったイメージに切り替えることが困難な場合があります。また、見通しをもって状況を調整することも困難ですので、この切り替えと、見通しを持つ共有の場面のハードルが高くなります。
●共有の場面での機会設定
共有の機会設定では、題材が必要になります。そして共有の場面になる道具や材料の量に気を配る必要があります。例えばお絵描き、色塗では、その社会的な規模=人数よりも少ない数の各色のペンの設定が必要になります。
題材としては、幼児期・学齢期で言えば、お絵描き、工作、調理、辞書や資料の活用など、創作的な物や学習場面が設定できます。
移行期・成人期では、クラフトの道具、農具や工具、職場の共有の機材などが考えられます。
●共有の設定の中の工夫や支援
共有の段階が難しかったり、芽生え=気づき始めの時には支援が必要になります。
例えば、道具、材料を共有設定から本人用に分けるという方法があります。その他にも、道具や材料は社会的な規模=人数の数あるが、その置いている場所を全体の中央にすることで共有のような経験・体験になります。社会的な規模にも気を配る必要があります。
共有の道具や材料を、先生やお友達が管理して、それぞれが要求して活用する設定もよく行われています。
もちろん、接近や並行での支援、例えば自分の使う範囲の境界を明確にするなどの支援も有効です。
●各社会的段階の機会設定と支援について
各社会性の段階の機会設定と支援については、数回にわけて記事にまとめます。随時更新ですのです。現在アップされている内容は以下です。
- 社会的な気づきのレベルのアセスメントから機会を設定しよう
- お友達・同僚等の近くで活動する意味(接近・並行の意味)
- 周囲や近くに人がいる中での遊びや活動の設定と支援(接近・並行の機会設定)
- 道具や材料を共有で使うことの困難さ(共有の機会設定と支援)
- 協力・協調の苦手さと支援や工夫(協力の段階の支援)
- (更新予定)
書籍『生活デザインとしての個別支援計画ガイドブック』では、それぞれをアセスメントするための方法と参考になるポイントをフレームワークシートと表でお伝えしています。
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